インプラントのオールオン4と総入れ歯の特徴と費用を徹底比較
インプラント治療に新たな選択肢を提供する「オールオン4」。これは、多くの歯を失ってしまった方や、骨の量が少なく従来のインプラントが困難だった方におすすめの治療法です。
一方で、総入れ歯は長年にわたり多くの人々に利用されてきた確立された方法です。しかし、これら二つの選択肢はどのように異なり、それぞれの特徴と費用はどのようになっているのでしょうか。この記事では、オールオン4と総入れ歯のそれぞれの特徴を明らかにし、費用面での比較を深く掘り下げます。
インプラント(オールオン4)と総入れ歯の費用の違い
インプラント(オールオン4)と総入れ歯の費用相場は大きく異なります。この差は主に治療方法の違いと保険の適用範囲に起因しています。
オールオン4は、専門的な技術と特定の材料が要求される治療法です。そのため、費用も高くなりがちで、一般的には片顎に対する治療で200万円から400万円程度が相場とされています。
初期診断費用が数十千円かかることや、年間で数十千円から数百千円のメンテナンス費用が発生することも覚えておく必要があります。
一方、総入れ歯の治療は保険診療の範囲内にあり、費用も非常に抑えられています。治療費は患者さんの収入に応じて1〜3割負担となり、片顎で3,000円から2万円程度とされています。
この費用相場は保険適用のため、全国一律であることが多く、初期費用が圧倒的に安いと言えます。
インプラント(オールオン4)の費用
オールオン4という治療方法は、歯科インプラントの一種であり、失われた歯を人工の歯に置き換える治療です。この治療には専門的な技術と特殊な材料が求められ、それが費用に反映されます。
まず初めに、治療を受ける前の段階として初期診断が行われます。この段階で数十千円の費用が発生します。初期診断では、患者さんの口腔の状態を把握し、適切な治療計画を立てることが主な目的となります。
その後、治療に入りますが、手術費用と材料費用が中心となる費用です。この部分で片顎あたり200万円から400万円の範囲で費用が発生することが一般的です。この費用には、インプラントのフィクスチャやアバットメント、人工の歯(プロテーゼ)の製作費用などが含まれます。
さらに、治療後は定期的なメンテナンスが必要となります。メンテナンスには年間で数十千円から数百千円の費用がかかります。このメンテナンスは、オールオン4が長持ちするようにするために重要なステップです。
オールオン4の費用は、使用する材料や技術、そして治療を行うクリニックや地域によっても異なります。したがって、費用は一概には言えず、治療を行う前には、詳細な診断と治療計画のもとで正確な費用を算出することが重要です。
総入れ歯の費用
総入れ歯の治療にかかる一般的な費用は片顎あたり3,000円から20,000円程度となっており、治療を受けるクリニックや地域、用いる材料や技術によって異なることがあります。特定のクリニックでは全国一律の費用設定を採用しているところもあります。
治療費は個別の症例の複雑さや、治療計画によっても変動します。総入れ歯は患者さんの口腔内の状態や要望を念頭に置いて個別に計画されるため、治療前の診断が不可欠であり、その結果が治療費の決定に影響を与えます。それゆえ、初期診断を受け、詳しい説明を理解した上で治療を受けることが大切です。
保険治療としての総入れ歯は、国が定めた手順や素材を用いて作成する必要があり、一般的にはレジンのみを使用できます。これはレジン製の人工歯と義歯床から成るシンプルな構成の入れ歯を意味します。保険適用の場合、上下の総入れ歯を製作した際の費用は、1割負担で約7,000円、3割負担で約20,000円となります。
また、無歯顎(歯が1本もない状態)に対する保険治療は、基本的に総入れ歯のみとなります。この保険診療を利用することで、患者さんは2万円~3万円前後の比較的安価な治療費で総入れ歯を手に入れることが可能となります。
インプラントのオールオン4とは
「オールオン4」とは、特定の歯科インプラント治療法であり、4本から6本のインプラントを顎の骨に埋め込むことで、片側の顎の全ての歯を支える仕組みとなっています。この名前は、基本的に4本のインプラントを使用する治療法から命名されています。
この治療法は、失った歯の全てまたは大部分を取り戻す患者さんに特に推奨されるもので、通常のインプラント治療に比べて多くの利点があります。
従来の方法であれば、1本の失った歯ごとに1本のインプラントが必要であり、片側の顎で8~14本のインプラントを必要とする場合もありますが、オールオン4は最少で4本のインプラントで治療が可能です。これにより、治療期間を大幅に短縮し、費用と身体への負担を減らすことができます。
インプラントのオールオン4のメリット
インプラント治療法の一つとして、「オールオン4」という方法があり、多くの患者さんに有益な点が数多くあります。この方法は主に4つのインプラントを使用して、12本の連結した人工歯を固定するものであり、治療期間の短縮やコスト削減といったメリットを患者さんに提供できます。
まず、この方法により通常よりも少ない本数のインプラントで多くの歯を支えられるため、治療期間を大幅に短縮できます。これは患者さんが早く日常生活に戻れるという点で非常に価値があります。また、最小限のインプラントで治療を行えることから、治療費用も抑えられます。これにより、多くの患者さんにこの治療法を選択する機会を提供できるわけです。
さらに、オールオン4は高い咬合力を実現できる点でも注目に値します。これは食事時の快適さを増すだけでなく、咬筋や表情筋を鍛えることでアンチエイジング効果も期待できるという利点があります。この治療法を選ぶことで、患者さんは美しさと機能性を兼ね備えた治療を受けることが可能となります。
インプラントのオールオン4のデメリット
インプラントのオールオン4治療法は多くのメリットを持っている反面、いくつかのデメリットも存在します。まず、技術的に高度な治療であるため、その実施には専門的な知識と経験が求められます。したがって、熟練した歯科医師が行うことが前提となり、そのような歯科医師を見つけるのは容易ではない場合もあります。
また、一度の手術で複数のインプラントを埋め込む特性上、一部のインプラントが失敗した場合、修正が困難になるというリスクがあります。これは、インプラントの本数が少ない分、一本一本のインプラントにかかる負担が増大するためです。
さらに、オールオン4治療法は他のインプラント治療法と比べて費用が抑えられるとされていますが、それでも多額の治療費が必要になります。そのため、費用面での負担が小さくないこともデメリットとして挙げられます。
そして、患者さんの口腔内状態や健康状態によっては、オールオン4治療法が適応できない場合があります。例えば、重度の歯周病や骨の量が十分でない患者さんでは、この治療法が適応できない可能性が高まります。
総入れ歯とは
総入れ歯は、全ての歯が失われたまたは抜歯が必要な状態の患者さんが歯を復元する治療法として用いられる取り外し可能な補綴装置です。総入れ歯は「床」と呼ばれる合成樹脂やアクリルレジンで作成されたピンク色の土台部分と、それに取り付けられた人工歯から構成されます。
この床は上顎や下顎の骨にフィットするようデザインされており、人工歯は患者さんの噛み合わせや審美を考慮して配置されます。
治療に先立ち、歯肉や骨の形状を精密に測定することで、患者さん個々の口腔状態に適した設計を目指します。そして、この装置は疑似的に歯を使える状態にする目的で使用され、日常の機能を回復させる助けとなります。
ただし、総入れ歯の使用は自身の歯と同様の咬合力を得ることは困難であり、物理的な限界も存在します。さらに、長期間の使用は歯肉を圧迫し、骨吸収を進行させるリスクがあります。
総入れ歯のメリット
総入れ歯には、そのアプローチのシンプルさからくるいくつかの利点があります。まず、非常にリーズナブルなコストで利用できるのが大きな魅力であり、これは治療費用の負担を軽減する要因となります。特に、医療保険の適用を受けられる総入れ歯の場合、上下セットで約2万円程度と非常に経済的です。
また、総入れ歯治療は外科手術を必要としないため、身体への負担が少なく、リスクもほとんどありません。これにより、高齢者や手術を受けることが困難な方でも安心して治療を受けることが可能となります。
さらに、治療期間が短いことも総入れ歯のメリットとなっております。最短で当日に治療を完了できるケースもあり、患者さんが迅速に日常生活を取り戻せるよう支援できます。この速さは、インプラント治療と比較しても非常に短縮された時間で治療を終えることができる点で、特筆すべきメリットと言えます。
総入れ歯のデメリット
総入れ歯には確かに多くのメリットがありますが、その一方でいくつかのデメリットも存在します。
まず、咬合力、つまり噛む力が天然歯と比べて大幅に低下します。具体的には天然歯の10%から30%程度しか発揮できないとされています。このため、硬い食物を食べる際に困難を感じることがあります。また、咬む力の低下は食事の楽しみを減少させる要因ともなり得ます。
次に、総入れ歯の寿命が比較的短いというデメリットがあります。特に保険診療で作製したレジン製の入れ歯は、使用年数がおおよそ5年程度とされています。そのため、定期的な交換が必要となり、それが長期的なメンテナンスコストの増加を引き起こします。
さらに、総入れ歯の素材がプラスチック製であり、その床が厚く作られるため、食事の際に味や食感が変わってしまいやすく、熱を感じにくくなってしまいます。これによって、食事の喜びが薄れる可能性があります。
インプラントのオールオン4と総入れ歯の違い
インプラントのオールオン4と総入れ歯の違いを4つの観点から紹介していきます。
・費用
・寿命
・手術
・治療期間
費用
具体的な費用を見ていきましょう。オールオン4の場合、片顎について200万円から400万円程度の費用がかかります。この価格は人工歯の素材がプラスチックかセラミックかによって変わり、セラミック製は費用が高くなりますが、審美性と耐久性に優れています。
一方、総入れ歯は一般的なレジン製であれば保険適用があり、片顎について3,000円から2万円程度で受けることができます。しかし、強度や審美性を高めたい場合には、チタンやゴールド製を選ぶこともあり、その場合の相場は片顎で20万円から150万円程度になります。
次に費用に差がある理由ですが、オールオン4は医療保険が適用されない自由診療であるため、高額になりがちです。また、この治療は高度な技術と材料を要する上、インプラントを埋め込む外科手術が必要で、治療期間や回復期間も長くなります。
これらの要因が費用を高くしています。対して総入れ歯は保険適用が可能で費用を抑えられますが、数年ごとの作り直しが必要な点や、オールオン4に比べて機能面での制約がある点を考慮する必要があります。
寿命
インプラントのオールオン4と総入れ歯はそれぞれ異なる寿命を持つ治療法であり、それぞれの具体的な寿命とその理由を理解することは重要です。
まず、オールオン4の寿命は平均で15年程度とされていますが、適切なケアとメンテナンスを行うことで20年、あるいはそれ以上の長寿命を持たせることが可能です。オールオン4は特定の工夫を加えた4本のインプラントを使用しており、このおかげで10年や20年といった長期間にわたり快適に使用することが可能となっています。この寿命をさらに延ばすためには、日常的な正しいお手入れや3から6ヶ月に1度の定期検診が重要となります。
一方で、総入れ歯の寿命はおおよそ3から5年とされています。この短い寿命はいくつかの要因によるもので、一つは歯茎や顎の骨が痩せてしまうことで、数年ごとに適合する形状に作り直す必要があるためです。また、入れ歯の材質であるレジンが経年劣化してしまい、数年ごとに取り換える必要が生じるためです。
手術
オールオン4は、高度な技術と経験を要する治療法であり、手術が不可欠です。この手術では、まず患者の口腔内の詳細な調査が行われ、その上で最適な位置にインプラントを固定する場所が決定されます。口腔外科医が特殊な器具を使用して顎の骨に穴を開け、4本以上のインプラントを固定します。手術は約2時間から3時間かかり、技術的な深い知識を持った専門家が行います。治療後の適切な期間を経て人工の歯がインプラントに取り付けられ、失った歯の機能を回復させます。
一方で、総入れ歯は基本的に手術なしで進められる治療法です。患者さんの口腔内の型を取ることから始め、それを基に取り外し可能な義歯が製作されます。ただし、総入れ歯をさらに安定化させるためのインプラントを設置する場合や、残っている自身の歯を抜歯する場合には手術が行われることもあります。これらの手術は、総入れ歯の製作プロセスの前に行われる処置となります。
治療期間
オールオン4の治療は概して6〜7ヶ月ほどの期間を要します。この治療は、診察やテストから手術に至るまでいくつかの段階に分かれており、各段階で数週間から数か月の時間が必要とされることが一般的です。
具体的には、手術の初期段階で仮歯を装着し、その後4〜6ヶ月の期間をかけてインプラントが顎の骨と結合するのを待つことになります。この期間が経過すると、最終的な人工歯を装着することができます。この流れを踏まえると、治療全体の期間は大体半年から1年程度と言えます。
高度な技術と設備が整った医院では、インプラントの埋入手術から仮歯の装着までを半日で行うことも可能です。このような治療プランは、患者さんが最短1日で見た目と噛む機能を回復できるという利点を持っています。
一方、総入れ歯の治療期間は通常1〜2週間と非常に短いものとなります。しかし、抜歯が必要な場合には抜歯窩の治癒期間を2〜3ヶ月確保する必要があり、この間患者さんは歯がない状態となることもあります。
総入れ歯の製作自体は、型取りから始め、歯科技工士が総入れ歯を作製し、その後噛み合わせの調整などを行うため、最短でも2週間から1ヶ月ほどの時間を要します。
インプラントのオールオン4が向いている人
オールオン4のインプラント治療は、残っている歯の本数が少なく、その結果として大規模な咬合回復を求める患者さんに特に適しています。この治療は、伝統的なインプラント治療よりも少ない本数のインプラントを使用するため、身体的、経済的負担を軽減することができます。
また、骨の量が不十分な患者さんにも適用可能であり、骨移植を避けることができる点でも利点があります。
この治療法が提供する強固な固定ブリッジは、自然な歯に近い咀嚼力を回復するため、日常生活における快適さと自信を取り戻す助けになります。また、治療は手術後すぐに仮の歯を取り付けることができる即時負荷インプラントとして知られており、早期の機能回復を希望する患者さんにも適しています。
ただし、1〜2本のインプラントを希望する患者さんには向いていないと言えます。全体として、オールオン4は、従来の治療が困難であった多くの患者さんにとって、新たな可能性を提供する画期的な治療法と言えます。この方法を選ぶことで、患者さんは失った歯の機能を高いレベルで回復することが可能となり、より良い口内健康と生活の質の向上を実現できます。
まとめ
オールオン4と総入れ歯の治療法を深く探る記事の中で、多くの歯を失った患者さんや総入れ歯を検討している方々に、オールオン4が新たな解決策として適している可能性を提案しました。
オールオン4は、少ない本数のインプラントで安定した固定力を得ることができ、高い咀嚼力の回復や見た目の改善を期待できる治療法として詳細に解説しました。
一方で、治療費用が高額になる可能性も指摘し、経済的側面も考慮することの重要性を強調しました。総入れ歯との比較を通じて、それぞれの治療法の長所と短所を理解することで、患者さん自身が最適な治療選択を行えるよう助言を行いました。
この記事を参考に、オールオン4と総入れ歯の特徴と費用を徹底的に比較し、患者さんが賢明な選択をおこなっていただけると幸いです。
監修者 山田 嘉宏(やまだ よしひろ)
医療法人社団隆嘉会 ソレイユデンタルクリニック 理事長
1990年 昭和大学歯学部 卒業
1990~1992年 東京医科歯科大学補綴科 勤務
1992~1993年 茨城県友部歯科診療所 勤務
1993~1999年 品川区共立歯科 分院長 勤務
1999~2003年 よしひろ歯科クリニック 開院
2003年 医療法人社団隆嘉会 よしひろ歯科クリニック 開院
2014年 医療法人社団隆嘉会ソレイユデンタルクリニック 開院
資格
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
・日本口腔インプラント学会専門医
・IDIA(国際歯科インプラント協会/旧 ADIA(アメリカ歯科インプラント協会))専門医/指導医
・DGZI(ドイツ口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ISOI(国際口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ICOI(国際口腔インプラント学会)認定医
・日本臨床歯周病学会歯周病認定医
歯のお悩みはよしひろ歯科クリニックへ
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